百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



すると、俺の声に反応するように凛のまぶたが微かに動いた。

そして、凛の瞳が俺をとらえる。


「…は…る……来て…くれたんだ…」


喉から絞り出すようなその声は、いつもの凛の声とは比べものにならないぐらい弱々しい。

俺は凛の顔を見つめながら、彼女の体を支える腕に力を込める。


「…大丈夫か…?…大丈夫だよな?

また、これは妖の血なんだろ…?そうだよな?」


すると、凛は微かに微笑む。

それが肯定なのか、否定なのかは

彼女からだんだんと消えていく体温が物語っていた。

俺はそれを察した瞬間、体じゅうの血の気が引く。


「…おい、嘘だろ?凛!

今日でカンパニー辞められるんだぞ?もうこんなことしなくていいんだぞ?!」


凛は、小さく呼吸をしながら、俺の言葉を聞いている。


「…さっきは、ごめん……凛のこと嫌いだなんて、嘘だ。

ずっと、一緒にいてやるから。話聞いてやるから。」


凛は、全てをわかっていた、というように、小さく頷いた。

俺は、凛から消えていく体温を必死でとどめようと、凛の体をさらに自分の体に近づけた。


「なぁ、今年は花火大会行くんだろ?

もしまだ体調悪くて行けないなら、公園で二人で線香花火にしよう?やるだろ?」


凛は、微笑みを浮かべて無言で頷いた。


「そういえば、イルミネーションも行くんだよな?今度風邪引いても、俺に移せよ。そしたら早く治るだろ?

俺は熱が何度あったって、凛についてって隣で見るから…!」


凛は、小さく涙を流した。

俺の言葉を噛みしめるように、何度も何度も頷く。