百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



俺の言葉を無視して、結城は優しい顔をしながら話し始めた。


「そいつ、急に私の前に現れてさ。

口悪いし、態度悪いし、私のこと子ども扱いしてばっかりだし。」


……聞いてねぇっつったのに。


お前の好きな奴の話なんか、別に聞きたくねぇよ。


俺は、半分聞き流すようにして結城の話をなんとなく聞いていく。


「…でも、そいつ、優しいの。私が何をしても怒らないし、どんな話でも聞いてくれるの。

…側に、いてくれるの。」


……へぇ。


俺は、目を細めて、桜の花を眺めた。

すると、結城が、同じようにして桜を見上げて、ぼそ、と言った。


「……そいつ、今、私の隣にいる奴なんだけど。」


…………

……………え?


俺は、その言葉だけが耳に残って、ぱっ!と結城の方を見た。


……今、こいつ……なんて…?


すると、次の瞬間


結城が、俺の頬に手を当てて

そっと、唇に口付けた。





………え?


い…………

今………………


俺の思考回路は、停止した。



《遥side終》