百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


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《遥side》


「遥!こっちこっち!」


真昼の公園のベンチに座っているあいつが、俺を見つけて名前を呼んだ。


……俺が無理やりコンビニに連れ込まれて、カフェスペースで慣れない手つきで手当てを受けたあの日から一ヶ月。

俺は、流れで連絡先を交換されられ、たまに会うようになっていた。

彼女は、ぶんぶん、と手を振って俺を見る。


………ガキみたいなやつ。


俺より二つ上のクセして、性格はまるで子どもだ。


「…結城、今日はバイトねぇのかよ?」


“結城”、と俺は苗字で呼ぶようになったが、向こうは“遥”と呼んでいる。


……すげぇ、懐かれた。


俺が結城の隣に座って尋ねた言葉に、結城は一気に顔を曇らせて答えた。


「うん……。昨日働いたから。」


俺は、無言になった結城の横顔を、ちらり、と見る。

結城は、俺がバイトの話を聞くと、必ず冷たい顔をした。

俺は、結城から視線を逸らして言った。


「…そんな顔するぐらいなら、バイト辞めればいいじゃねぇか。

あの日、血だらけになってたのも、全部そのバイトが原因なんだろ?」


すると結城は、ぴくり、と肩を揺らして、低い声で言った。


「……私、給料前借りしてるから。

辞められないのよ。…今のバイトは。」