百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



不覚にも、俺の心臓が小さく鳴った。


「…っ………。」


女は、言葉を詰まらせて俺の顔を見つめた。


……“妖”…………?

まさか、こいつ、頭おかしい奴かよ?


俺は、すくっ、と立ち上がると、カバンの中に入っていた絆創膏のひと続きをパッと投げた。

そして、驚く女に言い放つ。


「かすり傷なら五枚もありゃ足りるだろ。

…じゃあな。」


…これ以上関わって面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。


俺は、女に背を向けてスタスタと歩き出す。


「あの!

……ありがとう!」


背後から聞こえた女の声には返事はしなかった。


………ったく、今日はツイてない。


今日の占いは三位で、まぁまぁ良かったのに

やっぱり、朝の占いはインチキだな。


“運命を変える出来事がある”なんて大袈裟な…。


俺は、後ろを振り返らないまま、夜の町を歩いて行った。



《遥side終》