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「さ、着いた。
安心して。中は見た目ほど悪くないから。」
周くんに連れられて歩くこと数十分。
入り組んだ路地を抜けると、そこには古いビルが建っていた。
……ここが“事務所”……?
なんか、妖のアジトって、怪しくてちょっと怖いんですけど……?
私は外にある階段を登って、二階へと上がっていく。
そして、階段の終わりにある扉を開けた周くんに続いて、恐る恐る中を覗いた。
「わぁ………。」
私は、つい声を出した。
そこは、周くんの言う通り、外観とは正反対の綺麗な部屋だった。
ソファもテレビもついている。
……ここ、私の部屋より快適かも………。
「佐伯さん、そこに掛けて。」
私は、ソファに案内され、腰を下ろす。
周くんも、テーブルを挟んで向かい合わせのソファに座った。
芝狸は、テーブルの横にある事務用の机の上にあるクッションに寝転ぶ。
「じゃあ……改めて、僕らの事務所にようこそ。
今から、僕らの活動について話すね。」
周くんは、私と目を合わせてそう言った。
うぅ。王子と目が合ってる。
ってか、こんな近くに王子がいる!
し……幸せ………。
「…佐伯さん?」
!
「……ご…ごめんなさい、何…?」



