百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



****


「買った洋服代は、後で芝さんに請求しようね。」


夢ヶ原の住宅街を、私の周くんは並んで歩いていく。

苦笑しながらそう言った周くんに、
私は尋ねた。


「本当に、怪我とかしてない?

着てた服、腕のとことか、少し破れてたけど…。」


その言葉に、周くんは腕を見ながら言った。


「かすり傷だよ。僕は大丈夫。

詠ちゃんの方こそ、割れたガラスとかに巻き込まれなかった?」


私は、首を振って答えた。


「私は大丈夫。

すぐに、水流からは抜け出せたから………」


その時、周くんの顔が曇った。

そして、小さく呟く。


「……九条………。」


私は、真剣な表情になる周くんに、思い切って尋ねた。


「周くん……。

周くんは、どうしてそこまで、遥のこと…?」


“嫌っている”。


とは、言えなかった。


その一言では片付けられない感情が、周くんの中にはあるような気がしたから。

すると、周くんは、少しの沈黙の後

ゆっくりと口を開いて答えた。


「……九条は、“裏切り者”なんだ。」


………え?