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「買った洋服代は、後で芝さんに請求しようね。」
夢ヶ原の住宅街を、私の周くんは並んで歩いていく。
苦笑しながらそう言った周くんに、
私は尋ねた。
「本当に、怪我とかしてない?
着てた服、腕のとことか、少し破れてたけど…。」
その言葉に、周くんは腕を見ながら言った。
「かすり傷だよ。僕は大丈夫。
詠ちゃんの方こそ、割れたガラスとかに巻き込まれなかった?」
私は、首を振って答えた。
「私は大丈夫。
すぐに、水流からは抜け出せたから………」
その時、周くんの顔が曇った。
そして、小さく呟く。
「……九条………。」
私は、真剣な表情になる周くんに、思い切って尋ねた。
「周くん……。
周くんは、どうしてそこまで、遥のこと…?」
“嫌っている”。
とは、言えなかった。
その一言では片付けられない感情が、周くんの中にはあるような気がしたから。
すると、周くんは、少しの沈黙の後
ゆっくりと口を開いて答えた。
「……九条は、“裏切り者”なんだ。」
………え?



