百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、体中が空っぽになった気分で、
その後ろ姿を見つめた。

するとその時

私の肩を抱いている周くんの手が、すっ、と離れた。


「……大丈夫?ごめんね、急に鬼火銃を
向けたりして…。

怖かったよね……?」


周くんが、優しく私に言った。

私は、はっ!として周くんの方へと体を向ける。

思ったより近くにあった周くんの綺麗な顔が私の心を射ぬいた。

ぱっ、と視線を逸らし、私は答える。


「だ…大丈夫だよ。

助けてくれて、ありがとう。」


すると、周くんが苦笑しながら言った。


「いや…僕は、九条の案に乗っただけだよ。

……大事なところは、いつもアイツに持って行かれるんだ。」


私はそれを聞いて、緊張しながら、
ずっと聞きたかった言葉を口にした。


「あ……あの…、さっき聞き間違えかも
しれないんだけど……

私のこと、“詠ちゃん”って呼んでくれた?」


「…!」


その瞬間

周くんは目を見開いて、少し頬を赤くした。


っ!

それを見て、私もつられて赤くなる。


周くんが、視線を逸らしながら言った。


「九条が、名前で呼んでたから、つい…。

ごめん、嫌……?」


私は、ぶんぶん!!と、全力で首を横に
振った。


「ぜ…全然、嫌じゃない!

むしろ、嬉しい…!」