一心くんは、こくん、と頷いて、ぱたぱた、と館内を飛んでいく。
その時、コツコツ、と私たちに駆け寄って
くる足音が聞こえた。
その方を見ると、濡れた金髪を掻き上げた
雅が、心配するような瞳で私を見ていた。
「……ケガは……ないか。」
独り言のようにそう言うと、雅は周くんを
ちら、と見て
そして遥に向かって言った。
「紺と八雲は、水槽が割れた瞬間に逃げたよ。
……こんなことして…また紺に痛めつけられたらどうすんの、馬鹿。」
すると、遥は平然とした顔で答えた。
「…最初に契約を破ったのはあっちだ。
邪魔するぐらい、どうってことねぇよ。」
話が見えない私に、遥が小さい声で呟いた。
「……詠は気にすんな。
風邪引かねぇうちに、早く帰れ。」
そう言い終わると、遥は、雅の腕を引っ張って、「行くぞ。」と言った。
そして、周くんの顔を表情を変えずに一瞬
見つめ、その場から歩いて出て行った。



