百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜




“動物”………?



記憶を探ると、私の頭に、ぽん、と今朝の“猫”が浮かんだ。



「…そういえば、私の住んでるアパートで、ブサイクな猫とは会ったけど……?」



すると、周くんの顔が、ぱあっ!と輝いた。



「それだ!……その“猫”が今どこにいるか、知ってるかな?」



周くんは、とびっきりの王子スマイルで私を見つめる。



「んーと……たぶん、アパートの私の部屋にいるはず…だけど…。」



勝手に抜け出したりしてなければ…。


私は、周くんの方を見て言った。



「あの“猫”、周くんのペットだったんだね」



人をいきなり尻尾で攻撃するぐらい
しつけがなってないのは

王子が優しく育てたからだったんだ?


私が一人で納得して、そう考えていると、周くんが苦笑して答えた。



「ペット……じゃないんだけど……。

まぁ、ざっくり言えばそんな感じかな?」







ペットじゃないの?



周くんは、私を見ながら言う。



「じゃあ、悪いんだけど、佐伯さんのアパートまで行ってもいいかな?

その“猫”、回収したいんだけど…。」



……!



私は、少しためらった。



……あの“おんぼろアパート”に周くんが来る?



…………。


もっといい所に住めばよかった!



……でも、今は緊急事態だもんね。



「う…うん!大丈夫!」



すると、周くんは、優しく微笑んで「ありがとう!」と私を見つめた。



はぅっ!!


やられた!!



だ…ダメだ。心臓が持たない…。



私は、バクバクする胸を抑えながら

周くんを連れて、墓の隣に建つアパートへと向かって歩いたのだった。