百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


私は、濡らしたタオルを手に、遥の横に
しゃがみこむ。


「“喧嘩”のレベルじゃないでしょ…ばか。」


そっ、と顔の傷口を拭くと、遥は目を細めて眉を寄せた。

小さく、痛がるような声が漏れる。


……確かに、大けがはしてないみたい…。


私は、遥の体を見ながら、尋ねた。


「…それ…やっぱり血なの?」


私の言葉に沈黙が続き、遥は静かに答える。


「…妖の血だよ。

……救えなかった………。」


え…?


しぃん、と部屋が沈黙に包まれる。


遥は、その時、初めて私をまっすぐに見た。


どくん。


脈が大きく波打った。


すると、次の瞬間

遥は、トッ、と私に体重を預けた。


ぎゅう、と、遥の腕が、私の肩を抱く。

綺麗な藍色の髪の毛が、私の肩にうずまった。


急に、胸が速いペースで鳴り始める。


「は………遥………?」


私が小さく名前を呼ぶと

遥は耳をすまさないと聞こえないぐらいの
声で呟いた。



「………今だけ慰めろよ………詠………。」