私は、言われるがままに支度をして、朝ごはんを急いで口に入れる。
「パンはくわえとけ。空で食えばいいだろ」
えぇ?
ほんと、何なの?
急かす遥に、違和感を覚えながら
スクールバッグを手に持つと
私は玄関を出て、部屋の鍵を閉めた。
ギシギシと鳴る階段を二人で降りると、遥はちらり、とスマホで時間を確認し、そして私に向き直った。
と、次の瞬間
遥の腕が、すっ、と背中に回り、私の体が、ふわっ、と宙に浮いた。
!
整った顔が目の前に来る。
私は、一気に体温が上がって、胸がドキドキと鳴りだした。
「ち……ちょっと。
何でお姫様だっこなの?」
私の言葉に、遥は、表情を変えずに、さらりと答える。
「何だよ。肩に担ぐ方がいいのかよ?」
そういう問題じゃない!!
担がれるよりは、まだマシだけど…
誰かに見られたら、また変に誤解されるじゃん!
すると、遥は、体勢を変えずに、そのまま、トン、と地面を蹴った。
一気に空へと舞い上がる。
「妖の力を使ってる時は、鬼火銃の持ち主にしか見えないようになってるから、大丈夫だって。」
遥が、そう言って私の顔を覗き込んだ。
…へぇ…
そうなんだ…。
なら、まだ一般の人に変な目で見られなくてすみそう。



