百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



その時、近くを歩いていた人たちが私たちを見て言った。



「ねぇ、あれ見て!」



「あ!“噂の”王子様と美少女じゃん。」



「なに話してんのかなぁ〜!」







周りの人が、ちらちらと私たちを見ている。



わわわ……!


人が……!注目されちゃう!



私は、王子に向かって言った。



「あの…歩きながら話しませんか?

……みんな、こっち見てるみたいだし。」



私がそう言うと、王子は辺りを見回して、困ったように微笑んだ。



「そうだね。

じゃあ、悪いんだけど…ちょっと僕に付き合ってくれる?」



“付き合う”………


いやいや、深い意味じゃないことはわかってるってば。


私は、一人ぐるぐると考えながら、王子の隣に並んで歩き出した。



……まさか、憧れの周くんに話しかけられるなんて。


やっぱり、今日の運勢は最高なのかも!



私は、ちらちらと王子の顔を盗み見る。



あー…やっぱりかっこいいなぁ……。


かわいいっていうか……



「あの……佐伯さん。」



「へっ?!は……はい?」



やばいやばい。


王子の顔に見惚れて、全然話を聞いてなかった。