百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



その言葉が本気なのか、私にはわからなかった。


遥ってば…いつも嘘つくから。

どこまでが冗談か、わかんないんだもん。


でも、遥の瞳はとても澄んでいたから。


私の心の中に渦巻いていた黒い気持ちは、いつの間にか、すっ、と消えていたんだ。


すると、私の背後から、キィ……、と扉の軋む音がした。


「……ケンカ終わった…?

外まで聞こえてたけど…。」


玄関が開いて、すっ、と雅が顔を覗かせる。

雅は、私と遥を交互に見ると、はぁ…、と小さく息を吐き出して、言った。


「遥。俺はあんたの過去を、詳しく知ってるわけじゃないけど…

亡くなった彼女のために、紺の言いなりになってるのか?」


その言葉に、遥は、ふっ、と視線を落とすと小さく答えた。


「……最初はな。

でも、今は…あいつが大事にしてた、今生きてる奴のためだ。」


え………?


私は、はっ、として遥の顔を見つめた。


…前に言ってた“紺との契約”も、その事と関係があるの…?


沈黙が続く中、雅は遥をちら、と見て言った。


「…まぁ、紺が何か言ってきたら、一番に知らせてやるから、もう一人で背負い込もうとすんなよ。」


遥は、小さく「…あぁ。」と答える。

すると、雅は私に向かって言った。


「あんたも。

命がけで他人助けるような危ねーこともうするなよ。」