百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜





突然風が止んで、聞き覚えのある艶のある声が聞こえた。

その声のする方へ振り返ると、階段の上に、紫色の着物を着た男性が立っている。

その男性は、にっこりと笑って、その瞳の色を隠し、感情は読み取れない。


「葛ノ葉……紺……!」


周くんが、彼を見るなり呟いた。

その場の雰囲気が一瞬で変わる。

そして私は、記憶の中の人物と目の前の人物が一致して、目を見開いた。


あ……あの人は…!


見間違うはずがない。

あの男の人は、私が遥に連れられて歩いた路地で会った、心を読む男の人だ!


……あの人が……紺だったの…?


その時、紺が私を見ながら口を開いた。


「……佐伯 詠さん…。

また会えて光栄ですよ。お元気ですか?」


私は、無言で彼を見上げる。


き……気を抜くと、また心を急に読まれるかもしれない…。


すると、紺はそんな私を見て、「そんな警戒しなくても…。」と、妖しい微笑を浮かべた。

その時、雅さんが紺を睨みながら言う。


「竜ノ神は見つかったの?

まさか、遥を置いて一人で来たわけ?」


その言葉に、紺は、ふっ、と笑って「竜ノ神は遥君に任せておいて大丈夫ですよ。」と答えた。

そして、意味深な沈黙の後、口を開く。


「今の私には、“強力な部下”が出来ましたからね。」


……え?

どういうこと………?


その時、周くんが、ばっ!と鬼火銃を紺に向けて構えた。

銃口の先には、少しも動揺する様子を見せない紺がいる。


「周……くん…?」