百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜




ち……ちょちょちょちょ


ちょっと待って!!!?



彼女が大きく目を見開く。


固まる私。


青年は私の肩を抱いた。







整った顔がすぐ隣に近づく。



ふわ……



あ……なんかいい匂い…。




「だから、ごめんな?」




青年は、彼女を覗き込むように少し首を傾げてそう言った。


すると、彼女の目にはみるみる涙が溜まっていく。


そして、泣きながらその場を去って行ってしまった。


私は、青年と抱き合ったまま、無言でその後ろ姿を見送る。



あぁ……行っちゃった……。



すると、青年が私から、ぱっ、と離れた。


その瞬間、はっ、と我に帰る。



……え


い…今何が起こって………。



すると、青年は無愛想な顔をして、さらり、と言った。



「悪いな。…もう行っていいぞ。」



「はぁっ?!!!!!!」



住宅街に、私の声がこだまする。



な………

なにこの人!!!


私を使って、告白断ったの?!


初対面ですよね?!



青年は、何事もなかったかのように歩き出した。


私は目を見開く。



え、嘘。行っちゃうの?


え?え?なに?



一人混乱して立ちすくむ私に、予鈴の鳴る音が聞こえた。



…………嘘でしょ?