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「周くん!あれを見て!」


しばらく走ると、見慣れたおんぼろアパートが、私たちの目の前に現れた。

その近くの山に見える景色を指差して、私は叫ぶ。


「“金色の……桜”だ……!」


それは、私が初めて竜ノ神と出会った時と同じ、美しい金色の花びらが夜空を舞う、幻想的な光景だった。

それを見た周くんは、真剣な顔をしながら、神社につながる階段を登っていく。


「まさか…本当に竜ノ神が現れたなんて…。

こんな大きく動くところは見たことがない」


私は、芝狸をぎゅっ!と抱きかかえ、周くんに続いて階段を登りはじめた。


『感じる……感じるぞい!

この先に竜ノ神がいるはずじゃ!』


芝狸が興奮した様子でそう言った。


……もしかして

遥たちが無理やり竜ノ神を連れ出そうとしたから、こんな大事になってるのかな…


もし、今日竜ノ神をめぐる戦いに決着がついたら、事務所とカンパニーはどうなるんだろう…?


…もう敵対することは無くなって、普通の生活に戻れるのかな…?


そうしたら……

“アイツ”とも…

“遥”とも、敵同士じゃなくなるんだよね……。


私はそこまで考えて、はっ、と我にかえる。


……わ…私、今なんで遥のことなんかが頭に浮かんだんだろう…?


私がここにいるのは、周くんと少しでも近づこうと思ったからなのに。

芝狸の願いを叶える為なのに。

お給料の為だったはずなのに……。