百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



な……何やってんのよ、あのおっさん!


自分が“狸”ってこと忘れたの?!

こんな真っ昼間に外を出歩いて、バカじゃん!

通報されて、動物園行きになっちゃう!


私が走って、芝狸に近寄ろうとした瞬間、遊馬が私の腕を、ぐいっ、と引っ張った。





「っ!遊馬?何するの?」


すると、遊馬は見たことないぐらい真剣な顔をして、少し早口で言った。


「狐と違って、社長は四足歩行じゃない。あれは………」


遊馬が、何かを言いかけて、口を閉じる。


え…?

今、なんて……?


すると、遊馬は眉間にシワを寄せて私に言った。


「先に事務所に向かっててくれ。

……急用思い出した。」


え?!


私が遊馬の言葉に呆気にとられてるうちに、遊馬はものすごいスピードで走り出し

狸が消えた路地に入って行った。

そこには“逢魔街十三番地”の看板が。

私は、その看板を見上げて不安が頭をよぎる


……ここって…。

前に私が迷い込んで、遥に助けてもらった所だよね?


“もう、この路地に近づくんじゃねぇぞ。



頭の中に、遥の言葉がこだまする。


……遊馬……?どうして……。


後を追った方がいいのかな?


でも、先に事務所に行けって言われたし…

遊馬は、ここが何の場所が知ってるのかな…?


私が悶々と考えていた、その時

いきなり背後から声をかけられた。


「……通れないんだけど。」