百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



…どういうことだろう?


記憶がないなんて、ますますおかしい。


私が考え込んでいると、遊馬が口を開いた。


「まぁ…少なからずカンパニーが関係してるだろうな。

最近、姿を見かけてないし、裏でなんかやってるんじゃないか?」


どくん、と胸が鈍く鳴った。


…やっぱり、カンパニーの奴らの仕業なの?


遥の姿が頭に浮かぶ。


アイツ、また悪いことに首を突っ込んで、紺の言いなりになってるんじゃ…。


その時、ぽん、と私の肩を遊馬が叩いた。

そして、にっ、と笑って私に言う。


「俺らは仲間を信じて竜ノ神を見つけるだけだ。

……何があっても………!」


私は、遊馬の言葉に、こくん、と頷いた。

その時、私はふと思いついて遊馬に尋ねる。


「そういえば、遊馬も妖浄化以外で事務所に顔を出すなんて、珍しくない?」


遊馬は、それを聞いて、ぴくり、と眉を動かした。


…最近、遊馬は、夜の妖浄化の仕事以外は、全く事務所に来なかった。

だから事務所では、私と周くんの二人っきりという状況が続いていた。

二人っきりって言っても、芝狸はいるんだけどね。


そこは置いといたとして。


すると遊馬が、少しの沈黙の後、口を開く。


「俺は優秀だからな〜。社長に、“特別任務”を任されてんだよ。」


…?


私はその言葉に少し違和感を持って遊馬を見た。


“特別任務”?