百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜


すると、遥はどこか寂しそうな顔をして、静かに答えた。


「…怒らねぇよ。一年会ってないし。

………すげー遠距離だから。」


そうなんだ…?


って。

そう言うってことは、本当に彼女いるんだ?


私は、少し雰囲気の変わった遥に尋ねる。


「電話とかしないの?」


遥は、「…しねーな。」と、ぽつりと呟く。


ふーん……。

一年も連絡取れないんじゃ、彼女も絶対寂しいよね。


……遥は嫌なとこもあるけど、ちょっと優しいとこも知ってるし

彼女のこととか、すごく大切にしそうなのにな。


「会いたいとか考えないの?」


私がそう尋ねると、遥は少し黙って、そしてまた寂しそうに笑って言った。


「会おうと思えば、すぐに会えるけど…。

……会うのは、あの狐野郎と縁を切ってからだな。」


遥が、見たこともないような真剣な顔をしてそう言った。

どくん、と胸が鳴る。

確か、遥の叶えたい願いは、葛ノ葉 紺との契約を破棄することだったよね。


……そんなに紺のこと嫌いなのかな?


遥は、私の方を見つめて、ゆっくりと口を開く。


「ま、お前には関係のない話だよ。

……さっさと寝な、エロガキ。」





遥はそう言うと、部屋の中に入って、ぱたんと扉を閉めた。


な……なによ、エロガキって!

遥の変態に比べれば、全然マシだよ。