百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



遥は、「そういうとこに気を使えないようじゃ、いつまでたっても周を彼氏に出来ねぇぞ。」と、からかうように言った。

私は、それを聞いてムッ、としながら言い返す。


「遥だって、そんなデリカシーのかけらもないことを言ってたら、すぐに彼女に愛想を尽かされるんだからね!」


「……!」


遥は少し驚いたような顔つきになる。


……?


遥は少し動揺した様子で私に尋ねた。


「…“彼女”?…お前、周から聞いたのか?」


え?

なんで周くん?


私は目を細めながら遥に答える。


「周くんと、遥の話はしないよ。

さっき部屋から出てきた美人さん、彼女じゃないの?」


その時、遥の眉がぴくり、と動いた。

そして、少しほっ、としたような顔をすると

軽く頭をかいて、ふっ、と笑って言った。


「あー…雅のことを言ってんの?

あいつは“彼女”じゃねぇよ。…たぶん、一生彼女にはならないな。」


……え?

そうなの?


私は遥の言葉に少し驚いて、彼女の姿を頭に浮かべる。


“一生彼女にはならない”、か。

あんなに綺麗な人なのにな。


……ってことは、あの人の他に彼女がいるってこと?


「遥の彼女、怒ったりしないの?あんな美人を部屋に連れ込んでたら、嫉妬されちゃうんじゃない?」