百鬼夜行 〜王子と狸と狐とアイツ〜



お腹が空いてるとかかなぁ……?


この子、ノラ猫?



私は、ごくり、と喉を鳴らすと
“猫”に向かって話しかけた。



「…踏んじゃって、ごめんね…?

…早くご主人様のとこに帰りな?」



“猫”は、返事をすることなく
ただ私を見つめている。



…やっぱり、言葉はわからないのかな…?



私は、はっ!としてスマホを見る。



…うーん。


このまま構ってるわけにはいかないよね…。



「私、学校があるからもう行かなくちゃ。

じゃあね、“猫”ちゃん。」



私が“猫”に、ひらひらと手を振って、アパートの階段を降りようとした瞬間

“猫”の尻尾が、私の足に、ぎゅるん!と絡まった。



「うあっ!!!危なっ!!!」



咄嗟に手すりに掴まると、その手すりはグラグラと揺れる。



危なっ!こっちも危ない!!



“猫”を見ると「待て……。」と言わんばかりの表情だ。



えぇ…?!


……困ったなぁ……。



私は、ぐるぐる頭を悩ませて、一つの結論を出した。



「じゃあ、私が帰ってくるまで部屋にいて!……ご飯あげるから。


…部屋のものは荒らさないでね?」



私は、部屋の鍵を開けると、“猫”を部屋に放り込んだ。



……大人しくしててくれるよね。


……荒らしてたら、今夜は“猫鍋”にしよう。



私は、さっ、とスマホを見る。



「ヤバい!遅刻!!」



私は、ギシギシと音を立てながら階段を駆け下りた。