Fiore Zattera


鞄のポケットに入っていた店の名刺をひとつ差し出す。

「彼女連れてきなよ、安くするから」

「生憎今フリーなもので」

「それは残念。冗談なしに、声かけてくれたら割引するから。イタリアン嫌いじゃなかったら来てみて」

イタリアン嫌いって人、あんまり見たことないけど。チーズ嫌いだと食べられないかもしれない。

「じゃあ行ってきまーす」

「気をつけて」

一流企業は普通土日は休みなのか。

なのに朝早く起きて幸は何を……あ、部屋探しか。

「おはよーございます」

裏口から入ると、副料理長がいた。材料を持っている。