男の力に女は敵わない。 私みたいに喧嘩とは無縁の人生を送ってきた人間にとっては、特に。 「触らないで!」 蝉が一瞬鳴き止んだ。 すぐに彼の手は離れた、ヒスを起こした可笑しな女だと思っただろうか。それならそれで良いから、早くどっかに行ってほしい。 彼の顔を見る勇気がない。 蝉が鳴き始めても沈黙は降りたままだった。気配からして、彼が移動した感じもない。 こんな重苦しい空間の降参したのは私の方だった。 「怒鳴ってごめんなさい、もう行って良いよ」 「どこに?」 どこにって、どこだろう。