生きてた、良かった。

「天国……?」

「縁起悪いこと言わないでくれる?」

「天使かと思ったから」

自分の頬が紅くなるのを感じた。

学校中からマドンナと指定されていたけれど、そんなことを言われたのは初めてだった。

それが傷だらけの男と私が出会った最初だった。




あれから、私が朝そこへ行くと傷だらけの彼は人懐こい笑顔を見せて先に居た。

菱沼、ひとつ下の学年、喧嘩っぱやい、不良、だらしない。

私が頬を紅らめたのが馬鹿みたいな相手だった。
それでも毎日いる。

彼はこの歳で暴走族の族長をやっているらしい。彼の口から聞かなくても、これくらいみんな常識のように知っている。