そんな結婚、あるワケないじゃん!

ドボドボ…と水道から出てくるお湯を眺めながら「はぁ…」と出てくるのは溜息ばかり。

握りしめた袋の中から使いきりのシャンプーとコンディショナーを取り出し、壁付けの洗面台の上へと置いていく。


まさか、こんな事になるなんて思わなかった。
羽田の熱にも驚いたけど、「帰らなくてもいい」と親に言われてしまうとは。


「どれだけ信用されてんのよ、羽田の奴……」


母は私が男性経験ゼロだと知ってるくせに。
これが普通の親なら、きっと『帰ってこい!』と怒鳴られて当然の筈だと思うんだけどーー。



「何故かそういうところは放任主義なんだよねぇ…」


いい加減娘がいい年だというのを認識してるせいなのか。
それとも挨拶に来た時の羽田の印象が、余程良かったからなのか。


(確かにあの時の羽田はカッコ良かったけど……)


早朝の公園でキスしてるところを隣のおばさんに見つかって、コソッと母に暴露されてしまった。
話を聞いた母はニヤついて、「彼氏を呼んできなさい」と宣った。

ちょうど店舗と本社を行き来し始めた頃で、羽田はすっごく忙しそうだったのに。



「挨拶に行けばいいんだろ?」


二つ返事で請け負って来てくれた。
意気揚々と我が家へ上がり、キリッと引き締まった顔でこう言われた。



「美結さんと付き合ってます。羽田洋平です」


よろしくお願いします…と頭を下げた。
それ以上、必要のない言葉は言わなかった。