「お前の作ったサラダ旨かった。またあんなの頼む」



初めて羽田に褒められた。
サラダなんて誰にでも作れるよ…と言いたかったけど、やっぱり嬉しくなってくる。


「…じゃあ今夜は『じゃこサラダ』にする」


居酒屋の定番メニュー。よく2人で食べたやつ。


「旨そー!期待しとく」


綻ぶ顔に胸が鳴る。
きゅん…と軋む音に口角を上げ、「ん…」と小声で返事した。


「じゃ…行ってくるね…」

「キャン!キャン!」


ペソも一緒に挨拶をしてドアを閉めた。

声をかけてもらって良かった。でないと今夜、どっちに帰るか迷うとこだった。


(裸見られてスッゴく落ち込んだけど、考えてみたら私だけじゃなかったし……)


頭の中には未だに忘れ得ない羽田のヌードがある。

下半身こそ全部見てないけど、モデルみたいにキレイな脚の記憶は残ってる。


それからあの意外と引き締まった体つきも……。



(マズいって……今そんなの思い出さなくていいから……!)


ブンブンと頭を振って電車に乗る。
ゲージの中のペソは案外と落ち着き払った様子で、これなら仕事場に連れて行っても大丈夫だと、甘く考えてたんだけど……。




「キャン!キャン!キャン!キャン!キャン!キャン!キャーン!!……」


裏口に繋いだ途端、ずっと鳴き続け。
私の姿が見えないのが、どうにも気に入らないらしい。