涙の雨と僕の傘

名瀬がおかゆを作ってくれた。


料理は得意じゃないって言ってたけど、十分美味しい。

からっぽの胃から、全身にしみていくような温かい美味しさだ。


食べている間、ずっと名瀬に見られている。


いま俺、ひどい恰好だからあまり見ないでほしい。


寝癖あるし、鼻かぴかぴだし、シャツよれよれだし。

何より汗くさいだろうからそれが気になる。


でも……いいか。


名瀬が来てくれた。

それだけで、もう。




「名瀬はもう、来てくれないと思ってた」

「え?」


食べる手を止めて、スプーンを置く。



「避けられてたから」



名瀬は気まずそうに、ごめんと小さく謝った。


謝ってほしかったわけじゃないけれど。

これはつまり、もう避けないでいてくれるってことなんだろうか。


そうだったら、いいな。



「いいよ。……来てくれて、嬉しかった」

「笹原……」

「ありがとう」



俺は笑ったはずなのに、なぜか名瀬が、泣きそうな顔をした。


どうして、と焦る。

何が名瀬をいま傷つけたのだろう。

もしかして、嫌味っぽかっただろうか。


ぐるぐる考え出した時、名瀬のスマホが鳴った。


名瀬の表情ですぐに、相手が誰なのかさとる。


俺の部屋にまでかけてくるなよ、なんてわけのわからない文句が出かけたのを、

すんでのところで飲み込んだ。