涙の雨と僕の傘



「笹原、大丈夫? ポカリ飲む?」



目が覚めたら、名瀬がいた。


ああ、夢を見てるんだ。

なんて幸せな夢だろう。



俺の部屋に名瀬がいる。



しかもポカリにストローを付けて飲ませてくれた。


名瀬、優しい。

知ってるけど。



「笹原、熱計った?」

「ねつ、はかってない……」

「体温計どこ?」

「たいおんけい、ない……」



本当はあるけど、どこにしまったか忘れた。


探すのも億劫なので、ないことにしたんだ。



「笹原薬飲んだ? 病院は?」

「くすり、のんだ。びょういん、きらい……」



そう言うとため息をつかれ、おでこに冷たいものが貼られた。


冷えピタだ。


俺、これ嫌い。

ぬるくなった時気持ち悪いから。



って、あれ。

これ夢じゃないな。


夢じゃないのに、名瀬がいる。

目の前に、いる。




「……なんで、なせがいるの?」



ゼリーを食べるか聞かれてうなずくと、体を起こすのを手伝ってくれた。

やった、桃ゼリーだ。



「学校休むから、生きてるかなと思って連絡したのに、返事がなくて心配したの」

「ごめん……みてない」

「うん。来て良かったよ。笹原ほっといたら食べない飲まないでほんとに死んじゃいそう」



俺も、ちょっと死ぬかと思ったよ。


だから素直に、ありがとうと言った。