涙の雨と僕の傘

そのあと、名瀬が彼氏と行く予定だった神社にふたりで行った。

恋愛成就のパワースポットらしい。


それが本当なら、俺の恋が成就することを願えば、叶うだろうか。


でもそれは、同時に名瀬の失恋を意味する。

きっと名瀬は、泣くだろう。



俺は、願ってもいいんだろうか。


彼女が泣くと、わかっていても。



ちらりと彼女の横顔に目をやると、うっすら残る涙の跡。



……決めた。


俺の願いはこうだ。



『彼女の願いが、叶いますように』



それでいい。

それがいい。


この願いなら、絶対に名瀬は笑ってくれるはずだから。



一生懸命に何かを願っている名瀬を見つめる。


すると名瀬もやがて目を開けて、俺を見上げてきた。



自然と、どちらからともなく微笑み合う。




どうか君が、幸せでありますように。









名瀬が、好きだ。