帰りの車の中。お腹は満足しているけど、頭は満足していなかった。

メニューを見たらやっぱり高くて、それでも一番安い物を頼もうとしたら、雪ちゃんが私の分までさっさと注文してしまった。しかもそれが一番お高いやつで……。

値段を見てギョッとしてたら、

『気にしない気にしない。江奈が美味しそうに食べてくれたらそれで良いんだから』

と言ってメニューをヒョイッ!と没収されてしまった。

……結局、ご馳走になってしまった訳なんだけど。

「あの、ホントにホントに、今度お礼させて下さい」

「またその話?さっき気にするなって言ったじゃない。アタシから誘ったんだから。美味しかったでしょ?」

「はい、それはもう……」

味は申し分無かった。初めて食べたけど、熟成肉があんなに美味しい物だとは思っていなかった。

「じゃあ、それでいいじゃない」

この話はこれでおしまい、と、カーステレオから流れるjazzを、フンフン~♪と上機嫌で口ずさんでいる。

(良くないよっ!)

デートの時だって結局、私は一千も出さなかった。と言うか、出す隙を与えてくれなかった。