きみと、春が降るこの場所で



腕の中で俺を見上げて、詞織が小さく頭を振る。


「違う。起きたばっかりだから、入んない」


そういう事か。

朝食を抜く人は大抵そんな事を言うけれど、似たようなものだろう。


寝起きだろうが何だろうが飯があれば食えるだけ食う俺とは違うんだな。そもそも、胃の容量からして差があり過ぎるのだけれど。


「夜ご飯はクリスマスバージョンなので、楽しみなのですよ朔さん」


「ケーキとか出んの?」


「出るよ。お肉もあるよ」


なんだよ。なら俺が持ってきたケーキはいらないな。

食いたいって言うなら、やるけれど、そもそも勝手にケーキを食わせていいのか。


食事制限とかないし、大丈夫…だよな。


詞織を膝に乗せたままの体勢に疲れてきて、ズリズリと尻を引き摺る。


ちょうどいい角度に傾斜をつけたリクライニングに背中を預けて、詞織を抱え直す。


伸ばした足を広げると、すっぽりと間に収まった。


「朔はずるい」


「なにがだよ」


「一緒には寝ないくせに、平気でこんな事する」


そりゃあお前。それとこれとは訳が違うだろ。

どこまでがセーフでどこからがアウトなのかわからないんだよ。お前何でも、いいよって言うから。


「なにしよっか、朔?」


ほら、まるで俺の間に収まっている事を自然に受け入れたみたいに、何でもない事のようなフリをするから。

同い年の男女としてどうなのかってラインが薄れて見えなくなる。