きみと、春が降るこの場所で



「別に、冬は毎年来るんだから、いつか見れるだろ」


四季が巡れば、また冬は来る。


花が芽吹く春も、茹だるように暑い夏も、山が紅葉に染まる秋も、雪が降る冬も。


だから、そんなに気を落とすなと言うつもりで、詞織の肩を叩こうと、した。


けれど、ひゅ、と息を吸い込む音がして、詞織が唇を引き結ぶから、伸ばした手が止まる。


「詞織…?」


やってしまったと、思った。

聞いちゃいけない事。聞きたくない事に、触れてしまったんだと。


「すごく、朔には言いたくなくて、朔も聞きたくない事、ひとつだけ言っていい?」


すう、とゆっくり息を吸い込んだ詞織は、揺れもしなければ潤みもしていない瞳を、俺に向ける。


そして、訊ねたくせに返事も聞かずに、言うんだ。


「年が明けたあたりから、少しずつ、わたしは眠っている時間が増えるかもしれない」


「な、んだ、それ」


「来年の今頃は多分、生きていたとしても、ずっと、眠ってるよ」


シーツを手のひらでなぞって、詞織は目を伏せた。


ずっと眠っている、その意味が永遠の眠りではないとして。

いつか、詞織は目を覚ますのだろうか。


それを、俺は詞織に聞いていいのか。