一定のリズムで背中を摩りながら、あやす様な口調で詞織が言う。


「たくさん泣いて、そしたらまた笑えるからね」


「そういうもんか?」


「そういうもんです。ねえ、朔。いいこと教えてあげる」


肩に埋めていた顔を上げて、赤く腫れた目元を綻ばせた詞織は、グッと俺の口角を指で押し上げる。


「泣かないように、笑うんだよ」


「は、はなひぇ!ひおり!」


「笑えなくなったらね、また笑えるように、泣くんだよ」


俺のマヌケな顔がおかしかったのか、吹き出して笑いながらベッドに転がる詞織の言葉を反復する。


泣かないように、笑う。

また笑えるように、泣く。


ずっと口角を上げていたら、疲れるだろうな。

かといって、ずっと涙を流している事も、辛い。


だから、笑って。泣きたい時は泣いて。


「詞織も泣きたい時は、来いよ」


「やだー、朔かっこいいね!でもわたしは泣きません!」


嘘つけ。今泣いていたじゃねえか。


けれど、それは俺のために流した涙で、詞織が辛くて流した涙では、ない。


いつか、見せてくれるかな。

詞織が、苦しくて、泣きたい程辛い時は、俺の一番そばで、泣いてくれるといい。


涙が止んだ後の笑顔を、俺が最初に見たい。