詞織は俺をラグの上に転がして、ちょっと待っててね、と部屋を出て行く。
頭からバケツをひっくり返したように、全身がびっしょりと濡れている。
もちろん水ではなく、汗だからベタついて気持ち悪い。
「えっと…朔、起きてるよね?」
戻ってきた詞織が手際よく濡れたタオルを首筋やわきの下に当てて、額に浮かぶ玉のような汗を拭う。
「気持ち悪…」
「えっ、吐く?待ってね、大丈夫だよ」
妙に落ち着いてるな、詞織。
もっと焦ってパニックになって、救急車とか呼ぶんじゃないかと思った。
「吐かねえから、行くなよ」
「そっか、うん。わかった。でも水分は取ってね」
程よく冷えたスポーツ飲料のペットボトルにストローを挿して、飲みやすいように詞織が俺の頭を支える。
髪も汗で濡れているのに、そんな事は気にもせずに膝を貸して、額に手のひらを乗せる詞織を、何だか無性に抱き締めたくて。
この子に会いたいと思って、ここまで来たんだと思うと、どうしようもなく抱き締めてほしくなった。
「朔。ありがとうね、来てくれて」
「……俺が、勝手に来ただけだろ」
風邪なんか移して、詞織が感染症にかかったらどうしよう。
ただの風邪をたかが風邪とは、呼べないかもしれないのに。



