「何してるの?」


いや、やっぱりこいつの方がバカだ。何回同じ事を聞くんだよ。


「見ればわかるだろ。サボってんだよ」


「…さぼっていいの?」


初めてその言葉を口にしたように、舌の回らない口調で言うから、思わず面食らってしまう。


こいつが俺より年下だとしても、授業をサボりたいって欲求がないなんて事は有り得ない。

余程のガリ勉で無ければ、だけれど、こいつはさっき自分であまり頭がよくないと暴露したんだ。


「悪いけど、いいんだよ」


「どっち?」


「そりゃあ……悪いな。よくはない」


「じゃあダメだよ。さぼっちゃダメ」


何でお前に説教されなきゃいけないんだ。初対面だからな。ついでになんでお前パジャマなんだよ。


「…お前こそ、その格好。もしかしてそこから抜け出して来たとか?」


そこ、と指差したのは、平地よりも高くなっている河川敷から街を眺めているとまず目につく、この辺で一番デカい病院。


なんて、そんなわけないよな。


「なんでわかるの?」


「マジかよ!」


冗談で言ったのにそういう反応はやめろ。

今度は後頭部にバレー部のエースのスパイク並の衝撃を受けた。


「ま、まじ…?」


聞き慣れない言葉はまず口にするって、ガキかよ。

なんか顔も体も小さいし、背も低いけれど、ガキと呼ばれる年齢ではなさそうなのに。