「何してるの?」


そんな声が頭上から降って来て、反射的に首をひねる。


ついでに動かした眼球のど真ん中に映ったのは、春先の外出には明らかにおかしいパジャマ姿の女の子。


「……は?」


「え?」


真ん丸な目を更に丸くさせて、小首を傾げる仕草に、ああこいつ関わるとまずいタイプだと直感で悟った。


「えっと……何してるの?」


たっぷりと間を置いたにもかかわらず、全く同じ問いかけをするそいつを再度無視する。


「ね、ねえ!……えぇ…寝ちゃうの?」


眠ったフリをしてやり過ごそうとしたものの、一向に去ろうとしない気配にいい加減苛立ってくる。


「…何なんだよ」


「しゃべった!」


思いのほか耳の近くで聞こえた声。


嫌な予感をしながら、薄く目を開けると、文字通り目と鼻の先にそいつの顔があった。


「うわぁあ!おまっ、何してんだよ!バカか!」


「え?…うーん、バカではないかなぁ。あんまり頭がいいわけでもないけど」


飛び上がって起きる俺をあっさりと避けたあたり、鈍臭いわけではなさそうだ。


俺1人が心臓に野球部のエースのホームランボールを食らったような衝撃を受けていて、バカみたいだろ。