きみと、春が降るこの場所で



顔を上げる事は出来なかったけれど、彰さんにわかるように強く頷く。


少しの間を置いて、彰さんが一番聞きたくなかった事を、告げる。


「詞織は夏まで持たない」


声も出ない程、一瞬で喉が乾く。

何かを言おうとした、けれど何も言えなかった。


「周期的に今年の夏を越えられるか越えられないかはわからないとは、言われていた。けれど症状が出るのが早過ぎたんだ。去年の暮れにはもう、頻繁に眠るようになっていただろう?」


「……は、い」


「そして今日の高熱。これからは起きている時間が圧倒的に少なくなる。1日や2日では目を覚まさない日が続くはずだ」


聞きたくない。詞織が目を覚まさないなんて、そんな事はありえない。

明日も、一緒にいようと言ったんだ。まだその返事を聞いていない。


「朔くんとのタイミングも考えたら、起きている詞織と話が出来る時間も限られる」


― ― ―これからの時間は、君にとって苦痛になる。


あの言葉の意味を理解していなかった。


目を覚まさない詞織のそばにいて、俺は何を出来る。

何をしてやれる?

詞織が怖いといった眠りから引きずり出す事が出来ないなら、他に何があるんだ。