きみと、春が降るこの場所で



どうして、責めないんだよ。

俺なら、八つ当たりでもいいから、何かを責めないとそんなに冷静にはなれない。


「でも、詞織を連れ出したのは俺です」


「それは詞織が望んだ事でもあるんだろう?あの子は毎年桜の季節になると抜け出すから、わかるよ」


彰さんの言う事に違和感を感じる。


桜の季節になると抜け出す。

それがわかっているのなら、なんで止めないんだよ。


俺が問い詰めるよりも先に、彰さんは察したんだろう。俺の目を見て、頷いた。


「父親としては、止めるのが正解なのかもしれない。けれどあの子にとっての正解はやりたい事をする事なんだ。それを私が止めるわけにはいかない」


「それでも、詞織の体調を考えたら、絶対に止めた方がいい決まってる」


自分の事は棚に上げて、偉そうに言える事じゃない。


けれど、腹の底に溜まった物は吐き出してしまわないと、なくならない。


「朔くん、今から話す事を聞いても、自分を責めないと約束してくれるか」


「彰さん、俺の話を」


「聞いている。それに答えるんだ。だから、約束をしてくれ。絶対に君は君を責めない事を」


そんなの、簡単に出来るわけがない。

前置きをするという事は、俺が自分を責めるような事を話すという事なんだから。


俺が頷くまで待つ気なのか、彰さんはエンジンをつけて暖房を入れた。


冷たい空気と温かい風が混ざり合って、違う温度に変わっていく。

ゆっくりと、体の末端に熱が戻ってきた。