きみと、春が降るこの場所で



初めから用意をされていた想いじゃなかった。


いつの間にか、愛しさが溢れて止まらなくなっていた。


零れるほどに届かなくて。

届いて欲しくないのに、零れていく。


この気持ちを伝えていいのか、伝えない方がいいのか、もう考えられないくらい喉奥まで迫り上がる想いを、抑えてはおけない。


「詞織、」


今しか言えない。

今言わないと、2度と詞織には届かないかもしれない。


声に乗せようとした、けれどそれを制止するように、詞織が小さく首を横に振る。


「それはだめだよ、朔」


「……なんで」


「わたしのワガママ。ごめんね」


詞織はずるい。俺のせいにしないで、自分のせいにするから、俺は何も言えない。


もう気付いているはずなのに、何も言わない事は、詞織の優しさなのだとわかっているけれど。

そんなの、詞織が悲しくなるだけだろ。


「朔にお願い。もしわたしが死ぬ時は、朔はそばにいないでね」


顔が紅潮する。血が集まって押し出し合うように、熱く。


怒りでも悲しみでもない、何が真ん中にあって、涙が出るんだろう。