アクアブルー水族館から出ると、辺りはオレンジ色に街が染まっていた。
先頭をヨタヨタと歩いていた増田カナコは、クルッとボクらのほうを振り返り尋ねた。
『ねー、今からどうする?』
『じゃあ、みんなでカラオケ行かない?』
『いいねー!賛成!カラオケ行こうよ!
私カラオケ大好き!』
彼女の提案に、増田カナコは身を乗り出して言った。
『良太も行くよね?』
『うん。いいね。行こう!』
『カオルっちも行くでしょ!』
『カオルッチ?』
『ちょっとカナコ!カオルが困ってるでしょ!』
『だってカオルって名前かっこいいんだもん!
だから、カオルっち!いやですかー?』
全く増田カナコの理由は理由になっていなかったが、ボクは微笑みながら了解した。
ボクの呼び名はカオルっちになった。
増田カナコは、土足で人の領域にズカズカと入ってくるが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
彼氏は、増田カナコのそういう所に惚れたのだろうとボクは思った。
程なくして、ボクらは市街地にあるカラオケ店に入った。
『ねー、誰から歌う?』
増田カナコはすでにノリノリで、カラオケのリモコン画面を見ながら言った。
『良太くんから歌ってくださいよー!』
『なんで、僕なんですか?』
『なんか声とか聞いてると、歌上手そうだなーって思いまして。
カオルもそう思うでしょ?』
彼女はボクに同意を求めてきたので、そうだね、上手そう!とその意見に乗っかって言った。
『わかりました!歌いますけど、ハードルは下げて聞いてくださいよ!』

