結局、彼女は白イルカのキーホルダーを二つ買った。
きっと自分用と彼氏用で二つ買ったのだろうと思った。
『カオルは何か買わないの?』
彼女はボクの瞳を覗き込むように見つめた。
『うん。欲しいものないから買わないよ。』
『そっか。
でもさっき、ペンギンのぬいぐるみを欲しい感じで見てなかった?』
『見てたよ。てか、見てたの?』
『いいやー、見えたの。』
彼女は時折、とても鋭く物事を観察している。
ボクの彼女への気持ちはバレてないだろうかと心配になる。
『ペンギンのぬいぐるみは欲しいと思ったけど、買わないや。』
『なんで?』
『大きかったんだ。
だから部屋にあったらあったで、邪魔になりそうだと思ってさ。
だから、買わないよ。』
『そっか。』
『それよりも、そろそろカナコちゃんたちと合流しなきゃね』
『そうだね。電話してみるね。』
彼女はiPhoneを取り出し、増田カナコに電話をかけた。
僕らは、館内の中にある喫茶店の前で待ち合わせをした。
『ごめんねー、はぐれたのに全く気付かなかった。』
『こちこそだよー。私たちもお土産とか買ってて、全く気づかなかったもん。』
『あれー!?
もしかして、津久茂(つくも)くんにプレゼント?』
『そうだよ!悪い?』
『あんた、この前めっちゃケンカしてたのに、もう仲直りしたんだ。』
増田カナコは呆れたように笑った。

