水族館の中を一通り見て回って、ボクらはお土産売り場に立ち寄った。
入ってすぐ、ペンギンのぬいぐるみと目があった。
思わずかわいいなと思ったが、実際のペンギンぐらいのサイズで、部屋にあったら邪魔になるから買わないでおこう。
彼女はキーホルダーのコーナーに立ち止まり、白イルカのキーホルダーを手に取った。
『それ気に入ったの?』
ボクは何気なく彼女に聞いた。
『うん。私はね。』
『私はねって?』
『プレゼントしようかなーって思ってる。
でも、こういうのつけてくれそうにもないんだよね。』
と彼女は不満げに言った。
そんな彼女の表情は、不満げながらも朗らかなる表情をしていた。
ドロッと溢れ出る不安な気持ちに蓋をして、自然な感じで聞いた。
『もしかして彼氏にプレゼントすんの?』
『うん!そうだよ。』
彼女はニコッと、天使のような吸い込まれそうな微笑みで言った。
その微笑む瞳の先には、一体誰を映しているのだろう。
『そーなんだ。きっと喜んでくれるんじゃない?』
絞り出すように、今のシチュエーションに当てはまる言葉を口にした。
彼女には彼氏がいたという事実にボクは苦しくなった。
あの笑顔はみんなのものではなく、彼氏のものだったんだ。
あの柔らかな優しさも、穏やかな声色も、綺麗に伸びた美脚も、ぜんぶ全部彼氏のものだったんだ。
ほろ苦いキャンディを口に含んでいるような感覚だった。
なんとも言えない心地の悪さを感じた。
寂しさも感じた。
みっともないほど、ボクは彼女の事が大好きだったんだ。

