小学校の遠足で行った以来、水族館には行かなかった。
あまり楽しいイメージが無かったからだ。
魚は観るものじゃなく、食べるものだ!ともボクは思っていた。
だけど久々に水族館の中に入ると、そんなボクのイメージは180度覆された。
色とりどりの魚は、まるでアイドル達がスポットライトに当たる場所を探し踊っているように見えた。
大きくて厳ついサメの顔は、よく見るとかわいかった。
海月が泳ぐ水槽を見つめていると、訳もなく芸術的な気持ちになった。
展示されている海の生き物たちすべてが、魅力的で非現実な空間を作り出していた。
久しぶりの水族館は、本当に楽しかった。
それと同時に、彼女に感謝の気持ちが湧いてきた。
『水族館がこんなに楽しいところだなんて、思ってもみなかったよ。』
ボクは素直な気持ちを声にした。
『うん!たしかに!私も正直ビックリしてる!
こんなに楽しかったんだって!』
『小さい頃に行った時よりも、今の方が面白く感じるなんて意外だよね。』
『そーだね。』
夢中になって、水族館の中を観て周っているうちに、彼女の友人カップルとはぐれてしまった。
ボクは、はぐれた時すぐに気付いたが、言わなかった。
いや、言いたくなかった。
なぜなら、彼女と二人でいると、見えるもの全て、聞こえる音全てが愛おしくてたまらなくなる。
まるで自分がドラマの中心人物になったようだった。

