増田カナコの『彼女とその彼氏の思い出の歌』という言葉が、鼓膜の裏にへばりついて、反響している。
心が焼けるように熱かった。
この気持ちをもし、RADWIMPSの野田さんのような歌詞に出来るならどんなに楽だろうか。
混沌したボクの頭とはうらはらに、彼女の歌う「Darling」が部屋の空気に優しく呼応していた。
歌い終わった彼女に、増田カナコは『よかったよー!』と言って、マイクを持って歌い始めた。
『カオルは曲入れたの?』
『、、、。』
『ねぇ、聞いてるのー?』
『あっ、ごめん。
ついボーッとしてた。』
『あはは、なにボーッとしてんのよ。
ねぇ、ラッド歌ってよー!』
『ラッド?』
『うん!カオルのRADWIMPSが聞いてみたいの!』
彼女は、キラキラした瞳でボクの瞳に直接訴えかけるように言った。
ボクは、その彼女の要望に応えて、RADWIMPSの「有心論」を入れた。
私もその歌大好きー!と彼女はボクに弾ける声で言った。
歌い終わったボクは、本当に増田カナコの次で良かったと思った。
なぜなら、音痴の次に音痴が歌っても、落差があまり無くて助かるからだ。
『イェーイ!良かったよー!』
小倉良太はめずらしくテンションを上げて言ってくれた。
そのリアクションに、ボクとしては、あれ?やっぱりハズしてたのかな?と思った。
彼女は、良かったよ!上手だったよ!と笑顔で言ってくれた。
やっぱり、彼女の笑顔は、余計な事を忘れさせてくれるようなものだと改めて思った。
彼女に褒められて、とても嬉しかった。

