小倉良太は苦笑いしながら、マイクを持ちBUMP OF CHICKENの「天体観測」を歌い始めた。
伸びやかで力強い歌声は、この曲によく合っていた。
小倉良太は、彼女が言ったように歌がとても上手だった。
部屋に響き渡る「天体観測」に彼女はリズムを取りながら、ボクに『ね!言ったでしょ!』とドヤ顔で言った。
歌い終わった小倉良太は、マイクを机に置きコーラを一口飲んだ。
『良太は、本当に歌だけは上手なのよ!
歌だけはね!』
『ちょっと、なんだよそれ、歌だけはって。他にも色々と頑張ってんだぞ。』
小倉良太は、隣に座っている増田カナコのおデコを、コツンッとやさしく突いた。
『いや、でも本当に上手でしたよ!』
『本当ですか?ありがとうございます!』
ボクの言葉で、照れた表情を隠すようにコーラを一口飲んだ。
『じゃあ、次は誰から歌うー?』
『カナコが歌えばー?』
『いやよ!私あんまり歌うまくないから上手い人の次はいやよ!』
『何よそれ!』
彼女と増田カナコは笑いながらそんなやり取りをした。
『じゃあ、カオルっちはー?』
『いやー、ボクもあんまり自信ないですよね。』
とボクは苦笑いしながら言った。
『もー、仕方ないな!
私が歌いまーす。』
『そのつもりだったくせにー。』
『あれー?バレてたー?』
彼女は悪戯に微笑み、カラオケのリモコンを手にした。

