……………なんだそれ。




嬉しい、とか、思ってしまった。




「走るから、しっかりつかまっとけよ?」




「えっ、は、はい!」




これ以上話していられなかった。



今口を開いたら、伝えてしまう気がしたから。




『俺も、お前みたいな可愛いやつに出会ったの初めてだ』………って。




ポケットには、あの日奪ったままのキーホルダーがある。




きっと、こいつの大切なものなんだろう。



今すぐにでも返してやりたいけど…………。




これが俺とこいつをつなぐ唯一のものだから。




ごめん、七瀬。




こんなふうにしか、お前をひとりじめにできないんだ。




「ほんとにごめん、七瀬…………」





「え?なんですか?」




「…………ん、なんでもない」