ーーピピピピピッ

『んぅぅ、うるさい』


カチリと音を立てながらその騒音の元凶である時計を止め、私の1日が始まった


この1ヶ月、そう、俊のあの手術の日からずっと生きた心地がしなかった


あれから俊はまだ1度も登校はしていない。きっとそんな状況ではないからだろう



そしてあれから私はというと1度も病院へは訪れていなかった。白状だと思われるだろうが、私はただただ怖かったのだ、あの現実と向き合うことが


『記憶喪失なんて、漫画とかの中だけだと思ってたよ』


眠気に負けそうになりながらもようやく布団からはいあがり身なりを整えていく





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『いってきます....』

静かな家にそう小さく告げて家を出た。朝日がやけに眩しかったのをよく覚えている


季節はまさに初夏といったところで、つい先日進級したばっかなのにと時の流れを深く感じた


ちょうどこの一年くらい前に俊に合ったんだっけ.....似合わない運動部のマネージャーなんかを始めた去年を思い出して心がより重たくなった


一年前は....こんなこと考えなかったな、もう少し楽しかったはずなんだけど


自然と瞳に浮かんだ涙を周りにバレないようにさっと拭った


『....っ!』


その時不意に腕の力が抜けてしまい、手に持っていたカバンを落としてしまった


その上しっかりと締めたはずだったのに何故かカバンのチャックが空いていて、中身を見事に道路にぶちまけた


『なんなのよ.....もう』


ほんと最近馬鹿みたいについてない、心底面倒な気持ちが溢れるもこのままになんてしておけるわけがない


はぁ、と深いため息をつきながら散らばった教科書を拾い集める


うわ、砂まで付いてるよ.....もう今日学校休もうかな.....なんて思ったその時





「どうぞ」


頭上からなじみ深い声が聞こえてきた


どうしてこんなところに、なんて疑問は出てくるも到底口には出なくて




『俊.......』


1ヶ月ぶりにつぶやいたその名はもう以前の彼の面影すら残していなかった