事務課の仕事は非常に地味である。
お客様や取引先の会社からの電話対応、クレーム処理、伝票のスキャン、パソコンへのデータ打込み、重さによって異なる配送料が間違っていないかのチェック、ドライバーさんとの連携確認、もちろん他にもまだまだある。
時には俺や須和さんは「男だから」という理由で人手が足りない時にトラックへの荷物の運び入れに借り出されたりする。


最近はネットで指定日配達の変更なんかも出来る時代なので、それらのチェックも欠かすことは出来ない。
繁忙期は休憩も満足に取れないこともある。


その日、俺は珍しく大野さんに誘われてランチに出かけ、あろうことか先輩から東山さんとのことを聞かれたのだ。


どうやら大野さんは東山さんから相談を受けたのか俺が彼女を好きなことも知っていたし、彼女が熊谷課長と「そういう」関係であることも知っていた。


「あの熊谷課長になんて適うわけないんだから諦めなさい」とでも言われるのかと思いきや、「頑張って」と背中を押されてしまった。


何がなんだかさっぱり分からない。


俺だって頑張りたい。
ものすごーーーく頑張りたいけど、東山さんにその気がなければ彼女の心を揺さぶることなんて出来ないんじゃないだろうか。
須和さんにも言われたように、課長がとんでもない奴だって気づかせてあげたい。
だけどそんな課長を丸ごと好きな東山さんが俺に傾いてくれるなんて、そんな奇跡は起こりそうにないと思い始めていた。


そして、俺と大野さんがランチから帰ってきた時。
事務所が騒然としていることに気がついた。


「何かあったのかな」


大野さんも眉を寄せて、不思議そうに事務課のリーダーであるベテランの真野さんに何があったのか聞き出していた。


それは、お客様からのクレームだった。