いよいよやって来た、東山さんとの食事の日。
基本的に仕事ではスーツしか着ないので、この日も自ずとスーツでの食事になる。


ブランドもののお高いネクタイとかそういうものは一切持っていないので、少し前に買った水色のチェックの爽やかな印象を与えそうなネクタイを身につけた。


彼女がリクエストしてきた、大人の男の人が好きそうなお店、とやら。
俺には到底思いつかなくて、諸先輩方の力を借りてどうにかそれらしい場所を見つけ、予約をするに至った。
国分町にあるイタリアンバールのお店だ。


お店で直接待ち合わせしたので時間通りに到着すると、東山さんがお店の前で待っていてくれた。


袖にレースがあしらわれた淡いイエローのシフォンブラウスと白のタイトスカートを上品に着こなしていて、バッグはピンク。
どれもこれも彼女に似合いすぎていてため息が出る。
可愛すぎる。


「あ、神田さん!お疲れ様です」


会社で会話するのと大差ない口調で、東山さんは明るい笑顔を向けてきた。


「ごめんね、待たせちゃったかな」

「全然!今来たところですから!」


会社ではない場所で会うというだけで、ものすごい新鮮な感じ。
普段は明るい蛍光灯の下でしか見ない彼女を、薄暗い照明の下で見れるのも不思議な感じだ。


「オシャレなお店ですね。神田さんってこういうお店はしょっちゅう来るんですか?」

「いやいや、しょっちゅうってほどでは……」


ごめん、初めて来るよ。
俺はいつもチェーン店の居酒屋くらいしか行かないんだ。
……なんて心の中で謝ったりして。


案内されたテーブルでメニューを眺めながら、2人でどれを注文するか相談した。