なんだかいたたまれなくなって、宴会がお開きになったあとコズに話を聞いてほしくなって。
彼女の姿を探したけどどこにも無かった。
須和の隣はいつの間にやら空いていたのだ。
大酒飲みのコズがタダで飲める宴会を早々に退席するなんて、普通ならありえないこと。
もしかして隣が須和だったから退屈すぎて部屋に戻ったのかな。
「須和、コズ知らない?」
他の社員に紛れながら宴会場を出ていこうとする須和に声をかける。
すると彼はゆっくりとこちらを向いて、ボソボソ答えた。
「先に部屋に戻った」
「なんで?具合悪いとか?」
「違う。むしろ元気」
「プッ。あはは、そっか。それならいいや」
なんとなく気分が乗らなかっただけかもな。
いや、混む前に温泉に入りたかったのかもしれない。無類のお風呂好きだもんな、コズは。
深く考えずに私も部屋に戻った。
お風呂好きの彼女のことだから、きっと先に温泉に行ってるだろうという予想は的中。
私も着替えや浴衣を持って大浴場へ急いだ。
案の定コズはすでに温泉を堪能していて、そこで順が急に不機嫌になった話をした。
周りには私たちと同じ会社の社員もうじゃうじゃいたけど、声を小さくするとか秘密にするとか一切しない。
完全フルオープン。
いち事務課のいち社員の恋愛事情なんて誰も気にしてやいない。
相手がイケメンの熊谷課長とかなら話は別だけど。
「大丈夫だって〜、気にすることないよ。そのまま計画通りクリスマス告白作戦は決行しなさいよ?」
とろみのあるお湯に浸かり、これでもかというほどお湯を顔に塗りたくりながらコズが私に進言してきた。
私も彼女の真似をしてお湯を顔に塗りたくる。
あっという間にプルンプルンのお肌になった。
わーお、すごい!温泉って!
「フラれたら慰めてね……」
「そんなバカな」
私は真剣に悩んでいたけど、コズはいつものように豪快に笑い飛ばしていた。
フラれる訳がないでしょ、とばかりに。
こっちは不安でいっぱいだっていうのに、彼女はいつも「大丈夫」とか「うまくいくに決まってる」と励ます。
そして徐々に私も「そうかもしれない!」と妙に自信を持ってしまうのだ。
コズの断言力って相当なパワーを持っているなぁ、と感心するほどだ。



